シーズンを迎えている花粉症。くしゃみやセキにお悩みの人も多いですよね。最近、ツイッターなどで「鼻の中に、ワセリンを塗ると症状が軽くなる」とにわかに話題になっています。
 確かに花粉症は、鼻の粘膜などに花粉が付着して起きるわけですから、クリームを塗って花粉をシャットアウトしてしまえば効果がありそう。とはいえ、科学的な根拠はあるのでしょうか?そして本当に、効くのでしょうか?

 イギリスの医療サービスを運営するNHS(国民保健サービス)が提供している、
NHS Choicesという科学的根拠に基づいた信頼できる情報が紹介されているサイトがあります。

 NHS Choicesで、花粉症(Hay fever)の「予防」の項を調べてみます。すると・・・
ちょっと見にくいですが、下図の赤枠の部分をご覧ください。 和訳すると、「鼻の穴の内側(穴の入り口に近い部分)に少量のワセリン(ペトロレウムゼリー)を塗り付けることで、花粉が入るのを防ぐことができます」と書いてあります。

 過去に世界中で行われた臨床研究を検索できるPubMed(パブメド)を使って調べてみます。「Pollen cream」(花粉 クリーム)などの語句で検索してみると、いくつかの研究が過去に行われていることが分かりました。

 2013年に発表された中国の研究グループによる論文では、「プラセボ対照二重盲検下比較試験」という、非常に信頼性が高いといわれる方法によって効果を調べました。

 研究グループは、慢性アレルギー性鼻炎と診断された患者さん30人を2つのグループに分け、ひとつのグループには、治療用のクリーム(ワセリンと同じ、原油を精製してできる成分を含む)を渡します。そしてもうひとつのグループには、偽クリーム(見た目は似ているが、別の成分が入っている)を渡しました。そして、どちらのグループにも、1日3回、鼻の内側にクリームを塗ってもらいました。
 30日後、研究グループは患者さんたちを検査。鼻炎の症状を示す指標(NSSs)を調べました。すると・・・。
 治療用のクリームを使ったグループは、開始前が23.4だったのに比べ、開始後は10.7と大幅な改善を示していました。しかし、偽のクリームを渡されたグループはあまり改善しておらず(開始前後で3.6の改善)、その差は統計的に有意であるとされました。(なおクリームを塗ることにより、悪い影響が出た人はいませんでした)

 この結果から推測されるのは、ワセリンに含まれる成分は花粉をひきつけやすい性質があり、鼻の内部への侵入を防ぐことで、症状を軽くしてくれるのではないか?ということです。外出前などに、鼻の内側(穴の入り口に近い部分)に「少量」塗り付けるというのは、あくまで数ある対策のひとつとしてですが、「試してみても良さそう」と言えそうです。

文献:Yahooニュース2016年3月18日

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